少し時間をさかのぼって・・・MSCはロンドンに本部があり、そのほか世界約100カ国に事務所を持ちグローバルに活動している国際NPOですが、私たち日本事務所が含まれる「MSCアジア太平洋地域」ディレクターのパトリック・カレオさんが先日、日本事務所を訪問されました。
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日本、シドニー、シンガポール、中国にあるMSCチームをすべて統括するのがパトリックさん。(通称:パットさん)私もお会いするのはアンバサダー就任後初めてで、緊張しましたがとても気さくで優しい方でした!いろいろあって朝8時からの早朝インタビュー(しかもパットさんの日本到着は前夜!)になってしまったにも関わらず、快く応じてくださいました。

簡単なプロフィールや現在のお仕事内容を教えてください。

学生時代は水産学者を目指していましたが、MBA取得後、企業勤務やオーストラリアの最大手スーパーColesなども経てMSCの現職についています。いまは1週間単位でオーストラリアとシンガポール、中国などアジア地域を飛び回り、各国のプログラムディレクター(注:日本事務所は石井さん)と一緒に、その国に合わせた戦略を展開する忙しい日々です。

各国でのMSCの仕事を通じて、日々感じることは?

MSCの “魚のサステナビリティを伝える”という仕事は難しいですが、やりがいがあります。私たちは、単なる『魚の保護キャンペーン』になることを避け、MSCの考えを小売業や水産業などビジネスレベルにまで落とし込んでいかなければなりません。
魚の市場は国ごとに違っていて複雑で、たとえばヨーロッパと北米はもちろん違いますが、地理的に近いオーストラリアとニュージーランドでも異なってきます。またビジネスの進め方、商習慣、食文化まで微妙に違います。各国で優秀なスタッフを集め、その国に合った課題を解決してかなくてはといつも思っています。

近年、特にやりがいや面白さを感じたプロジェクトは?

MSCの中国での急成長です。MSCは3年前に中国に初進出したのですが、中国は大変な相手になると思っていたのが、政府や業界関係者がMSCに強い関心を持っていて、素晴らしいサポートを得られました。またコミュニケーションがスピーディーでビジネスレベルも高く、プログラムが順調に成長していて感激しています。中国ではeコマースが盛んで、消費者にMSCのメッセージを伝えるのにとても強力なツールです。

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                                 (広報マネージャー、牧野さんと)

パットさんのホームであるオーストラリアでは、MSCは認知度は浸透していますか?

オーストラリアは国全体で社会問題や環境に関心があるものの、MSCが考える「魚の持続性」というサステナビリティについて、正しく報道してもらうのは結構難しいです。なので私たちが信頼する食のメディアやセレブリティシェフなどのスポークスマンを通じて、メッセージを発信してもらっています。
私がMSCの仕事を始めた9年前、当初MSCに興味があったものの、直接つながりのなかった水産業界と小売業界の担当者を結びつけたことで、うまく機能しMSCのプログラムも成長しています。

日本でMSCをもっと広めるには、どうすればよいと思われますか?

世界では50年前から漁獲量が減っていますが、日本の消費者が好きなイカやカニ、サバやサンマなどの漁獲量が特に不足し、深刻な状況まできています。MSCにとって、これは日本のみならずアジア市場全体の大きな課題で、もっといろいろな「海のエコラベル」付き製品を日本の市場で増やす必要があります。欧米でや世界でよく食べられているMSC認証製品は21,000種もあり、日本でもこれから大きく普及すると思っています。

日本では今後も、MSCに賛同してくれる小売や水産業界関係者を集める努力が必要ですが、消費者の間ではゴミの分別やリサイクルが当たり前になり、エコバックを持つ人も増えてサステナビリティへの関心が高まっているのを感じます。MSCの考える魚のサステナビリティについて、正しくポジティブに情報発信してくれるパートナーを探すことが肝心ですね。

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MSCの日本チームに対して、また2020年の東京オリンピックもふまえて、メッセージはありますか?

日本チームのスタッフは全員、本当によくやってくれています!!オリンピックの重要性も理解し、日本の水産業界に情熱的に働きかけ、MSCのプログラムに関わってもらえるよう日々努力しています。
伝統的に日本人が魚を大事に扱い、豊かな調理法で楽しむ和食文化はすでに全世界に影響を与えており、2020年の東京オリンピックではさらにアピールできますが、MSCの側面から見ても「その素晴らしい料理に使った魚はどのように管理され、どこから来たか?」ということを世界に向けて発信できる大きなチャンスになります。私自身もワクワクしますね!

最後に「日本チームは素晴らしい仕事をしており、今後もどんどん状況が好転すると確信しています」とパットさん。お忙しいなかありがとうございました!